2015年7月30日木曜日

聞かれたことに答えていない、五輪エンブレム類似問題

ベルギーのリエージュ劇場のロゴ(下図左)と、2020年東京五輪のエンブレム(下図右)の類似が問題となっています。

 

五輪組織委の広報担当者は「発表前にベルギーを含めて世界中の商標確認をしており、問題ない」と話した、とのことですが、知的財産の観点からいえば答になっていません。

ロゴを制作したベルギーのデザイン会社がフェイスブック に両方のデザイン写真を並べて投稿して、疑問を呈していますが、デザインとしての類似性、即ち、著作権の問題なのです。

商標権が問題となる場合、商標(トレードマーク)自体の類否だけでなく、その指定商品・サービスの類否も問われます。
マークが似ていても、使用する商品やサービスが異なっていれば、原則として問題にはなりません。

著作権の場合は、原著作物への依拠、即ち、模倣の有無が問題となります。

ただし、真似したかどうかは、心の中の問題で、外部からは本当のことが分からない場合が多いです。
そこで、原著作物との類似の程度や、原著作物の周知の程度などを検討し、模倣の有無を判断することになります。

私個人的な感想では、並べてみても、似ているといえば似ている、似ていないといえば似ていない。
そして、劇場のロゴは、リエージュ(Liège)のLを基にしたデザインであるのに対し、五輪エンブレムは東京(Tokyo)などのTを基にしているとのことですから、模倣の可能性は低いと考えられます。
そこで、2011年に採用されたリエージュ劇場のロゴマークが、どの程度世界的に知られていたか、が問題となります。

私は、予備知識抜きで見ると、五輪エンブレムはあまりTに見えないのですが、それはさておき、摸倣でない、ときちんと言える可能性は十分にありますので、問題をすり替えた答弁ではなく、創作物・著作物としての模倣の問題として回答すべきです。


朝陽特許事務所所長 弁理士 砂川惠一  1040052 東京都中央区築地2-15-15 セントラル東銀座703  Tel:03-3278-8405 Fax:03-6278-8406 e-mail:info@choyo-pat.jp


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